自由診療でのニューロリハビリ開始

経頭蓋直流刺激治療

経頭蓋直流刺激装置(BrainAgain)
頭蓋刺激装置は大田区の株式会社ケーディクロートの元社長米持十己博氏(現在会長に就任)と研究開発し製品化した。
経頭蓋直流刺激装置は、頭皮上から弱い電流を流して大脳の電場を変化させる方法である。
図に示してあるのは装置本体と電極である。赤が陽極、黒が陰極である。
脳は陽極刺激によって興奮しやすくなり、反対に陰極刺激によって興奮は抑制される。右利きの人に左大脳半球を陽極刺激すると、記憶力、集中力が高まる。同様に片麻痺の病側大脳半球を陽極刺激すると、運動神経細胞の可塑性(再生能力)が高まる。

片麻痺におけるリハビリ効果を増強させる

脳卒中後の片麻痺の回復は、発症後24時間以内に測定可能な握力が出現しなければ3か月後の予後は不良、4週以上続く麻痺は回復しない、発症後2-3週間以内に相当の回復がなければ最終的に重度の麻痺が残り、発症11週後を過ぎると麻痺はほとんど回復しないなど、悲観的報告が多い。そして片麻痺を治す薬はなく、片麻痺を直す手段はリハビリしか方法はない。
21世紀になり脳にも神経幹細胞が発見され、脳神経が再生する可能性が報告された。そして最近の10年間ではニューロイメージングの発展によって脳神経ネットワークの再構築の存在も明らかにされた。中枢神経系のニューロイメージングの発展を背景に、脳卒中後の神経回復促進を目的としたニューロリハビリテーション(ニューロリハ)という概念が定着してきた。近年のリハビリテーションは、脳の可塑性を促進することに焦点を当てたニューロリハに移行してきているが、未だにどのようなリハビリテーションが脳のネットワークの再構築に有効であるか、明確になっていない。
最近の20年間、頭皮から微弱な電流を脳へ流す経頭蓋直流刺激が、脳卒中後の片麻痺の改善に効果があるという報告が相次いだ。経頭蓋直流刺激を用いた研究に多くの研究者が飛びつき、数多くの良好な報告がなされたが、未だに臨床で応用されていない。これは必ず経頭蓋直流刺激が片麻痺を改善するという確証が得られないからである。しかし、経頭蓋直流刺激をリハビリに組み合わせて行うと、片麻痺そして失語症の改善がみられる症例が多くあることは事実である。現在の日本では、経頭蓋直流刺激は保険適応になっていないため、通常のリハビリとして使用することは出来ない。
また、片麻痺の重症度にかかわらず、下肢が伸展硬直し尖足による歩行障害を訴える症例は脳卒中後半数を超える。下肢の痙縮および拘縮を予防し、歩行をスムースにするために足関節の可動性を高め、麻痺した下肢を受動的に運動させる機器はリハビリの現場ではかねてより熱望されていた。さらに足関節の受動運動を行うリハビリは、大脳の感覚野領域を活性化させるに違いない。
今回、通常のリハビリの直前に経頭蓋直流刺激そして下肢の受動運動を行うことによって、引き続いて行うリハビリの効果を最大限に引き出すことが出来たので、この二つの医療機器をニューロリハビリの現場に提供したいと考えています。

経頭蓋直流刺激を行っているモデルは、吉川浩次氏である。頭髪がなく、頭皮から脳の形が推測できる。陽極電極(赤端子)を前頭葉の運動性言語中枢(Brocca)の直上におき、陰極電極(黒端子)を前額部において、2mAの直流電流を15分流している。このような刺激によって、脳卒中後の運動性言語障害は、回復しやすくなる。

この図は経頭蓋直流刺激+SmoothWalkerを同時に行っている状況である。左大脳半球に脳梗塞を起こし、右片麻痺を来した状況を考慮して同時刺激を行っている。陽極電極は左前頭葉運動野直上におき、陰極電極は反対側大脳半球(健側)運動野直上に置かれている。脳梗塞を起こした患側には陽極刺激で運動神経の活性化を促し、陰極刺激は健側運動野神経細胞からの患側への過剰な抑制を抑えるように神経の不活性化を促している。こうすることによって右片麻痺のリハビリによる改善効果が増強される。同時に行っているSmoothWalkerは、片麻痺による下肢の伸展によって尖足気味になっている足関節の可動域を広げ、足底が床につきやすくなるにように改善する。
経頭蓋直流刺激+SmoothWalkerの朝の15分の同時刺激は、約1~2日間有効である。

経頭蓋直流刺激装置(BrainAgain)の開発

経頭蓋直流刺激装置は、私が東京労災病院の脳神経外科時代、寺本明院長(元日本医科大学脳神経外科教授、元脳神経外科学会理事長)の下で大田区のケーディクロート株式会社と研究開発し製品化した。
経頭蓋直流刺激装置は、頭皮上から弱い電流を流してニューロンの置かれている電場、すなわち神経細胞外の電位を変化させる方法である。
図に示してあるのは装置本体と電極である。赤が陽極、黒が陰極である。電流を流す時間は、10~20分程度、1~2mAの微弱電流を脳内に流すようにして使用できる。
病側大脳半球を陽極刺激することによって運動神経細胞の可塑性(再生能力)を促し、健側を陰極刺激することによって患側への抑制をブロックし、片麻痺の改善を図ることが出来る。また、陽極刺激はBDNFの放出も促すと報告されている。

足関節受動運動器(SmoothWalker)の開発

正常な運動は、1つの筋肉が収縮し、(この筋肉を主動筋という)、その反対側の筋肉が伸びる(この筋肉を拮抗筋という)ことで成り立つ。そのため、正常な運動では主動筋と拮抗筋の同時収縮は起きない。しかし片麻痺の場合は麻痺側の運動時に病的な同時収縮が起きる。つまり、抑制されるはずの拮抗筋が同時に収縮するため主動筋がうまく動かない。このような状態が脳卒中後の片麻痺では生じる。
片麻痺においては足関節の拘縮が麻痺の強さにかかわらず生じ、その頻度は75%を超える。このような痙縮、拘縮は、退院し自宅に戻った後に進むことが多い。痙縮を改善させるためには、手足に何度も正常な動作を行わせ、主動筋と拮抗筋の緊張をゆるめ、関節の拘縮を防ぐことが原則である。このとき、痙縮を起こしている筋肉と関節を痛めないように、関節の受動運動を繰り返さなければならない。しかし、この動作を患者自身が麻痺していない側の手を使って、下肢に行うことは極めて困難である。
このような足関節の受動運動を安全に行うリハビリ機器がSmoothWalkerである。東京工業大学武田教授、そして大田区の株式会社アベテクノシステム、吉原幸次社長のもとで研究開発し、製品化にたどり着いた。

脳卒中発作後1年以内で片麻痺そして失語症に悩んでいる患者さんには、最適な通常のリハビリのブースターになります。
通常の診療で神経学的検査、血液検査、MRI/Aによる病巣診断、その後にニューロリハビリのプログラムを決定させていただきます。
受診は初震診予約でお願いいたします。

氏家脳神経外科内科クリニック 院長:氏家 弘